- 小学生年代ぐらいのサッカー選手
- こどもにメンタルについてアドバイスしたい親
- 有名選手のメンタルを参考にしたいプレーヤー・親・指導者
2022年8月31日に発売されたばかりの「こころのパス サッカーで折れないメンタルをつくる21のヒント」を読みましたので、早速感想をまとめていきたいと思います。
基本的に子供向けに書かれているので、深くサッカー選手としてのマインドセットやメンタルケアについて学ぼうとするような本ではないと思います。
小学年3・4年生ぐらいの子供でも読めるように簡単なことばで読みやすく作られており、「ぼくと同じだな」とか「今度からこういう姿勢で・こういう気持ちでサッカーに取り組んでみよう」みたいな気付きを自分自身で得られるようになっているところが良いところだなと感じました。
もう少しどんな内容か知りたい人はぜひ下の本文までチェックしてください!
サッカーを通して成長し続けるためのメンタルとは。。サッカーパパ&ママ、そして子供たち自身に読んでほしい。
この記事に書かれてること 目次をとじる
どんな人が書いた?
著者は2010年代を中心にサッカー日本代表で活躍された3名です。最近では解説や指導現場、メディアでもよく見かけるようになりました。
川崎フロンターレのレジェンドですよね。広い視野から放つ味方を生かすパス、ときおり見せる鋭いミドルなど、大好きな選手でした。最近では育成に力を入れてらっしゃる印象で、他にも解説やメディアでの記事執筆などで活躍。
個人的にはサンフレッチェ広島時代の印象が強い。小さいながらも得点感覚に優れたストライカーでした。J1・J2通算で歴代最多220得点は圧巻。最近では解説や指導者として活躍。
ぼくの感覚ではガンバ大阪の選手。そこまで上背がある訳でもないのに中盤だけでなくセンターバックもこなせる、ボールを奪う達人。ご自分でおっしゃってますがアスリートには珍しい弱メンタルの持ち主?今は南葛SCでプレーを続ける。
気になる内容は?
タイトルの通り、著者の3人がサッカーを好きでいられるためのメンタル的なヒントを21個教えてくれます。3人が7個ずつで21個です。
21個のヒントは、サッカーを好きで楽しむためのヒント、逆境をのりこえるためのヒント、チームメイトとの信頼関係のためのヒントなどなど、さまざまな観点から語られます。
この本は、スポーツメンタルヘルスの専門家やそっち系のジャーナリストが書いた訳でも、そういう専門的な知見が書き並べられてる訳でもなく、あくまで選手目線でのヒントがまとめられています。
しかも、彼ら3人が関わったチームメイトや育成選手たちの例を挙げて「こういうメンタルが良いよ」というのではなく、あくまでご自分の性格・経験に基づいたヒントを授けてくれます。
だからこその説得力というか、納得感みたいなものがあります。
その反面、彼らが直に体験していないことについては触れられていないように感じました。
例えば、3人とも程度の差はあれど指導者には恵まれてきた、というような事を言われています。なので、指導者との間に問題を抱えている、指導者に対して信頼できない、という種類の悩みに対するヒントはなかったように思います。
まあ、ありとあらゆる悩みを網羅するなんてことはできないから仕方ないですが、そういう悩みへのヒントを期待している人は注意した方がいいかもしれません。
3人のメンタルに関するキャラクターがそれぞれ違うのも面白いと思いました。
印象としては、挫折に対してしっかりと自分の頭で考えて答えを見つけた強メンタルの憲剛さん。うまくいかないときにイライラすることもあったけど、自分にできることを見つめ直して持ち直した強メンタルの寿人さん。そしてすぐに落ち込みショックを引きずる弱メンタルの今野さん(ご自分のことを“普通の人”とおっしゃってました)。
3人のメンタルの違いを表すものとして、たとえば「緊張やミスに対してどう向き合うか」というテーマでそれぞれ以下のように述べています。
小学生のころはよく緊張していたけど大人になるにつれて緊張しなくなったという中村憲剛さんはこう
プロになってからも、ぼくは足がふるえるような緊張をあじわったことは1回もなかった。「練習でやってきたことをしっかり表現したい」と冷静に考えていて、いつも心のどこかで、それがぜったいにできると信じていた。
こころのパス サッカーで折れないメンタルをつくる21のヒント p.94
シュートミスという分かりやすいミスに出会いやすいストライカーならではの感性で、チャレンジの大切さを説く佐藤寿人さんはこんな感じ
サッカーは「ミスのスポーツ」。だから、どんどんミスすればいい。
プロの世界でも、ミスはたくさん起こる。ワールドカップに出場するような選手だって、みんなと同じようにミスをする。小学生のミスも、プロ選手のミスも、ミスはミス。ぜんぶ同じだ。成功させようと思ってチャレンジしたプレーの“結果”だから、なにも気にする必要はない。
こころのパス サッカーで折れないメンタルをつくる21のヒント p.97
これに対しての今野泰幸さん
「サッカーはミスのスポーツだ。だから、ミスをこわがらずにチャレンジしろ!」
コーチにそんなことを言われても、ミスをしたらだれだってヘコむし、プレーするのがこわくなるのはしょうがない。“チャレンジの気持ち”なんてどこかに飛んでいってしまうし、きっと、サッカーをやめたくなってしまうくらいのショックを受ける人だっていると思う。
こころのパス サッカーで折れないメンタルをつくる21のヒント p.101
寿人さんが「ミスなんて怖がってもしかたないからチャレンジしよう」と言ったすぐ次のページで、今野さんが「そんなこと言っても怖いもんは怖い」と言っているのはちょっと笑ってしまいます。
(そんな今野さんがミスを乗り越えるためにやっていることとは??知りたい人はぜひ本を購入して読んでみてください。)
2人の意見に矛盾があるようにも感じますが、この本の中でも言われているように「サッカーに正解はない」ということなんでしょう。
メンタルの作り上げ方も人それぞれ合うやり方があって、誰にでも適用できる正解なんて都合のいいものはなく、自分に合ったやり方を探しながらサッカーに向き合っていくのが良い、ということなんだろうなと理解しました。
また、3人に共通しているのは、うまくいかなくなって逆境に落ち込んだとしてもそこで立ち止まらないことだと感じました。
ひとりは自分の中で必死に考えて答えを見つけ、ひとりは「いまの自分にできることは何か?」と現状をしっかりと受け止めて前に進み、ひとりは色んな人の意見に素直に耳を傾け前に進むヒントを得ます。
当たり前のことでしょうけど、「ひたむきな努力を継続すること」が大切なんでしょうね。まあその当たり前が難しい訳で、この本にはその当たり前なことをするためのヒントが書かれているとも言えると思います。
どんな人が読むべき?
冒頭でも書いたとおり、小学生向けに易しい言葉で書かれています。内容も難しいことは書かれていません。
なので専門的な深い知見を勉強したい大人向けではなく、小学生年代ぐらいでプレーするこどもたち自身に読んでほしいなと思います。
分量は大人であれば1時間ちょっとあれば読んでしまえるでしょう。こどもでも、パラパラと好きなとこから断続的に読んでいっても数日で読み終えるぐらいだと思います。
サッカーの競技人口は大幅に増え、環境が整備され、選択肢や可能性が増えてきた一方で、少年サッカーを取り巻く状況は大昔とくらべてシビアなものになってきているような気もします。
こどもたちはきっと色々なストレスにさらされながらサッカーに向き合っていることでしょう。
この本には、同じように少年時代から選手時代までさまざまな挫折を味わった著者の自身の経験からくるアドバイスが載っています。
さらに上で書いたようにそれぞれの性格や考え方が違うので、21のヒントの中に「これは僕と同じだ」とか「僕もこうしてみよう」とか思えるような、自分が共感できるものがきっと見つかると思います。
保護者の人ももちろん、こどもにメンタル的なアドバイスを送る上で参考になると思います。
こどもってある年齢を超えてくると、親の言うことは無条件に聞きたくないって感じになりますよね。コーチの言うことなら聞くくせにね(笑)
なので、メンタル的なことに関しても親が下手に口出すと「お父さん・お母さんは分かんないでしょ!」と返されることもあるでしょう。
そんな時に「昔日本代表で活躍した選手も同じようなことで悩んでて、こういう風に考えてがんばったらしいよ」というと響くものがあるかもしれません。
また、こどもたちへの21のヒントとは別に保護者向けのメッセージも記載されています。3人それぞれが見開き2ページで、広い選択肢を提供すること、こどもの決断を尊重すること、そしてたくさん褒めること、これらの重要性について語ってくれています。
まとめ:こどもの可能性は無限大
いかがでしょうか?
このレビューを読んで気になった方はぜひ購入して、読んでみてください。
最後に、サッカー少年を応援する親として勇気づけられたので、今野さんのメッセージを引用して締めたいと思います。
子どもたちには、可能性しかありません。いつ、どこで、どんなタイミングで急にぐんと成長するかなんて、誰にもわかりません。そのときを待ちながら、たくさんほめて、可能性を広げてあげる。そんな見守りかたができるといいのではないかと、ぼくは思います。
こころのパス サッカーで折れないメンタルをつくる21のヒント p.123
サッカーを通して成長し続けるためのメンタルとは。。サッカーパパ&ママ、そして子供たち自身に読んでほしい。